バイアス実践ノート

他部署との連携や協業に潜む無意識バイアス:より円滑な部門間協力を実現する実践アイデア

Tags: 無意識バイアス, 部門間連携, チームリーダー, コミュニケーション, 組織論, 実践アイデア

部門間の連携や他部署との協業は、現代の多くのビジネスにおいて不可欠な要素となっています。企画の実現、プロジェクトの推進、サービスの改善など、部署の垣根を越えた協力なくしては成し遂げられないことが少なくありません。一方で、異なる文化や目標を持つ部署間での連携は、時に難しさを伴うこともあります。そこには、個人の意識の表層には現れにくい「無意識バイアス」が影響している可能性があります。

この無意識バイアスに気づき、適切に対処することは、部門間の信頼関係を構築し、より円滑で生産的な協業を実現するために非常に重要です。本記事では、部門間連携において影響を及ぼしやすい無意識バイアスの例と、それに気づき、行動を変えるための具体的な実践アイデアをご紹介します。

部門間連携に影響しやすい無意識バイアスの例

部門が異なれば、組織文化、業務プロセス、短期・長期の目標設定などが異なるのが一般的です。こうした違いは、知らず知らずのうちに無意識バイアスを生み出しやすくなります。

これらのバイアスは、部署間のコミュニケーションを阻害し、情報の非対称性を生み、建設的な協業を妨げる原因となります。

無意識バイアスに「気づく」ための実践アイデア

自身の内に潜む部門間連携に関する無意識バイアスに気づくことは、改善への第一歩です。

バイアスを「克服・軽減し、行動を変える」ための実践アイデア

無意識バイアスに気づいたら、それを克服または軽減し、部門間連携を円滑にするための具体的な行動に移すことが重要です。

実践例:部門間連携バイアスを乗り越えたチームリーダー

あるIT企業の企画部門リーダーは、新しいサービス開発において開発部門との連携に課題を感じていました。企画側の要望を伝えても、開発側からは「それは難しい」「仕様変更が多い」といった反応が多く、納期遅延も発生しがちでした。リーダーは「開発部門は企画の意図を理解しようとしない」という無意識のバイアスを持っていたことに気づきました。

そこでリーダーは以下の実践に取り組みました。

  1. 開発部門の日常業務を理解する: 開発部門のマネージャーに相談し、週に一度、開発側の定例ミーティングにオブザーバーとして参加させてもらう機会を得ました。これにより、開発側の抱える技術的な課題や、彼らがどのようにタスクを管理しているかなど、具体的な状況を理解するようになりました。
  2. 開発部門の立場での検討を依頼する: 企画段階で、開発部門のキーパーソンに早い段階で情報共有し、「この企画を実現するために、開発側でどのような点が懸念されるか、技術的に可能なアプローチは何か」といった観点からのインプットを依頼するようになりました。
  3. インフォーマルなコミュニケーションを増やす: 業務上のやり取りだけでなく、休憩時間などに開発部門のメンバーと雑談する機会を意識的に増やしました。趣味の話や業界トレンドなど、業務と直接関係のない会話を通じて、人としての関係性を築きました。

これらの実践により、リーダー自身の開発部門に対するステレオタイプや敵意帰属バイアスが軽減されました。開発部門との間には信頼感が生まれ、企画段階からの連携が密になったことで、より実現可能性の高い企画立案や、予実管理の精度向上に繋がりました。

まとめ

部門間連携に潜む無意識バイアスは、組織全体の生産性やイノベーションを阻害する要因となり得ます。自身の内に内集団バイアスやステレオタイプ、敵意帰属バイアスなどが存在しうる可能性に気づき、客観的な視点を持つ訓練を行うことが重要です。

そして、気づきを行動変容に繋げるためには、共通目標の確認、建設的な対話の場の設定、情報共有の改善、成功体験の共有、そしてネガティブな解釈を保留し事実を確認する習慣といった具体的なアプローチを継続的に実践することが求められます。

部門間の壁を低くし、互いを尊重し協力し合える関係性を築くことは、チームや組織全体の力を最大限に引き出すことに繋がります。日々の業務の中で、自身の無意識バイアスに注意を払い、より良い部門間連携を目指した実践を積み重ねていくことが期待されます。